ハンドルネームの通り山を歩くことが好きで、山頂を往復する山もいいけど土地の歴史や文化にふれて、ゆっくり旅をするように縦走するのもいいです。
◆大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)
仕事で訪れる奈良県の都市部からは遠く離れ、吉野から熊野に至るロングトレイルです。
飛鳥時代に修験道の開祖、役の行者によってひらかれた修行の道で、いわゆる熊野古道の一部として2002年ユネスコ世界文化遺産に登録されました。
ロングトレイルの本場といえばアメリカですが、1300年も歩き続けられてきたということは、案外ここが発祥の地なのではと思ってしまいます。
序盤は千本桜で有名な吉野の金峯山寺から、山上ヶ岳までのコースです。
この区間を千回も往復する「大峯千日回峰行」という、ウルトラハードな荒行も存在します。
山上ヶ岳は日本で唯一、今なお女人禁制の伝統が守られている山です。
山ガールにお目にかかれないのがちょっと残念だけど、時折ほら貝の音色がこだまする道を神妙な気分で歩きます。
ちなみにここは登山がご趣味の天皇陛下が、皇太子時代に行啓されています。
そのご縁で山頂の大峯山寺では、今年の即位に際して、本尊の秘仏蔵王権現尊像が特別公開されていました。
大峯山寺の長い歴史でも珍しいご開帳(前回は世界遺産登録時)ということで、ありがたく拝ませていただきました。
そして、せっかくなのでプチ修行体験もさせてもらいました。
頭から断崖に身をのり出し、仏の世界を覗く「西の覗き」という有名な行です。
もちろん命綱をつけるのですが、逆さ吊りになって色々問いかけられながら、ズルズルと崖にせり出されるという恐怖の体験でした。
こんな感じの問答が続きます。
坊さん「お父さん、お母さんを大切にしろよ!」→自分「はい!」
坊さん「月に一度はお墓まいりしろよ!」→自分「はい!」(半年に一度かな…)
坊さん「仕事でウソをつくなよ!」→自分「はい!」(できる限りは…)
坊さん「心の中の黒いものを全部出せよ!」→自分「はい!」(またすぐたまるけど…)
旅の中盤は近畿・中国地方の最高峰の八経ヶ岳(1,915m)です。
鹿の食害によって、トウヒやシラビソが立ち枯れた景色が、大台ヶ原によく似ています。
ここを訪れたのは人が少ない冬季で、ちょっと怖かったけど無人の避難小屋に泊まって天体観測をしました。
空気が澄んだ日には高野山や金剛山、大阪湾を経て遠く六甲山まで見渡せます。
大峯奥駈道はトータル5日のロングコースで、北部を何回かに分けて歩いただけなので、また涼しい時期に歩き通したいです。
関西には他にも中央分水嶺を歩く高島トレイルや、六甲全山縦走路、ダイヤモンドトレールなど整備された良いコースがあるので、秋の行楽にいかがでしょうか。